足りていないものに
心を煩わせた半生のなか
ちょっとだけ見えてきたもの。
時間は流れ去るものだと、何の疑いもなく
生きてきて、はるか三十年前の同窓生と
酒を飲むなんて思わなかった。音信不通
だったし、仕事も違う、趣味も違う、過ごす
時間も違うし。
十代二十代三十代すっ飛ばし、
遊び馴染みだった、数人とのむ。
子供が成人した友、父母が他界した友
事業を成した友、などなどそれぞれが、
何かを失い、何かを手に入れている。
手に入れているものは
自分では気がつかない。
当たり前すぎて平凡だからだ。
しかし思った。今の俺には人さまほど
足りてないものはない。ということ。
そして探せば探すほど、足りないものは
喉の渇きに似た無限の鉱脈に行き着くこと。
おれだけがゆるさを、しごとを越えて
哲学にまですることができるのだから
そこに無限の宙がある。ウを由とする空だ
うちゅうそのものが、今この手のなかにある。